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のっけからお腹が空くこと間違いなし。

おいしそうな食事が登場する"ごはん映画"好きにはたまらないシーンから、この映画は幕を開けます。

 

キッチンに立つ、初老の男。

包丁を使ってミンチを作り、手際よく小籠包を包む。

魚に油通しをし、素材を中華鍋で炒めては、

土鍋を使い、三枚肉を煮込む。

 

その流れるような手際の良さ。

見事な名人芸に見惚れてしまう完璧なオープニングを見ただけで、きっとあなたは、

この映画が傑作であることを確信してしまうでしょう。

猛烈な空腹感とともに(食欲をそそる調理音と、素材を引き立てる美しい光にも、ご注目を!)

 

そして、そこから綴られていくストーリーも本当に見ごたえ十分なので、あらすじをきちんと紹介しておきます。

 

「台湾最高峰の高級ホテルでシェフを務めた父親は、男手ひとつで三人の娘を育ててきた。

日曜の夜は、父の料理を前に食卓を一家四人で囲むのが決まりであったが、娘たちの箸は進まず空気も重い。

彼女たちの生きる世界はすでに、この静かな家の外にあったのだ。

恋愛に臆病な高校教師の長女、航空会社勤務の才色兼備な次女、無邪気な女子大生の三女。

それぞれに恋の季節を迎えた娘たちが、一人、また一人と巣立っていく…」

この家族の物語の中にあって、じつは"スープ"が大きな役割を果たします。

年老いた父は、味覚が衰えてきたことを次女に諭されます。そのときにキーになってくるのが「生姜入りスープ」です。

 

次女のつくったスープを飲んだ父は、「生姜の味が強すぎる」と文句を言い、娘は「これはおかあさんの味だ」と対抗します。

そして、この後に起こるあの感動的なエピソード!こちらは本編を観てからのお楽しみに。

 

変わらぬ家族。変わり続ける人生。

ぼくは最後のシーンで大泣きしてしまいました。

 

100種類以上の色彩感覚に富んだ中国料理と、どの国でも通用する普遍的なドラマを

ひとつの作品へと昇華させた手腕は、本当にお見事!

 

最後に。監督は、『ブロークバック・マウンテン』や『ライフ・オブ・パイ』など、

ハリウッドでも活躍する台湾出身のアン・リー。

彼が40歳のときに製作し、アカデミー賞の外国語映画賞にもノミネートされた出世作となります。

​(文・Kino Iglu 有坂 塁)

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