お父さんの“味覚”が蘇った
白身魚とあさりのしょうがスープ
<材料>(約2人分)
・あさり 200g
・真鱈切り身 2枚
・しょうが 20g
・八角 1個
・鶏ガラスープ顆粒 小さじ1
・砂糖 小さじ1
・紹興酒 大さじ2
・水 400ml
・塩少々
・ミニトマト 4個
・パクチー 1/4株(三つ葉の代用も可)
<下準備>
・あさりは砂抜きしておく。
・しょうがは千切り。
・トマトはヘタをとる。
・パクチーは長さ3センチほどの長さに切っておく。
<作り方>
①小鍋にしょうがを敷き、その上に真鱈、あさりをのせる。
八角、鶏ガラスープ顆粒、砂糖、紹興酒、水を加えふたをする。
②中火にかけあさりが開き始めたらふたを取り、ミニトマトを加えて弱火にする。
完全にあさりが開いたら火を止める。塩で味を整える。
あさりの開き具合がポイント。よーく鍋とにらめっこを
③盛りつける前に八角を取り除き、それから器に盛りつけて仕上げにパクチーをのせる。
☞ポイント
★火を入れ過ぎると真鱈が硬くなり、あさりは身が小さくなるので火を入れすぎないように。
★盛りつける際に、タラが崩れないように木べらなどでていねいに取り出し、最後にスープをお玉ですくって盛りつける。
★パクチーが苦手な方は、三つ葉を代用しても十分美味しくいただけます。
\ Staff Voice /
実は毎回の撮影では、本と映画の2回分のスープを
さわのさんに作っていただきます。
すでに1杯めでお腹がいっぱいのはず…が、
どんどん胃に入ってしまうほど、
あっさりとした塩味にしょうががグッと喉を通る。
映画に出てくる日曜日の食卓での出来事と
お父さんの葛藤がこのスープで、
なんだか清々しい気持ちになりました。
恋人たちの食卓
人間関係というのは常に輪郭が定まることなくゆらゆらと揺れ動く不思議な形をしている。
それは生活を共にする家族という存在も同じで近すぎるせいか、見えない部分も多く、
変化していることに気づくのも難しいのかもしれない。
毎週日曜日は家族揃っての夕食。
朝から準備に張り切る父の豪快な料理法とリズミカルな包丁捌きは圧倒される。
お腹の空いた状態で観るのは危険すぎる料理シーンからさぞ大家族なのだろう?と想像するもこれで4人分だというのに驚いた。
豪華すぎるメニューとは裏腹に娘3人の心はここではない何処かを彷徨っていて、
それに気づきながらも料理をすることで気を紛らわす父がいた。
一流料理人の父は歳のせいか味覚の衰えを感じていた。
次女に指摘されながらも『私の味覚は正常だ!』と強がりをみせていたが、自覚があるようで、長年の経験を頼りに感覚で料理をしていた。
そんな彼の味覚が戻る瞬間が、今回のレシピ『生姜のスープ』なのです。
老いが原因だと思われていた味覚の衰えは実は心因性のもので『生姜のスープ』を口にした事で彼の心が解放された瞬間だったのでしょう。
私も数年前に舌痛症という味覚障害の一種を経験しています。味見するのも痛みを伴う原因不明の症状が続きました。
料理人としての将来に絶望を感じ、毎日不安で押しつぶされそうな日々を過ごしました。そんなある日、ある事を境にピタッと症状は治ったのです。
自分でも薄々と気付いていたストレスから解放された瞬間だったので『私、本当に無理してたんだな…』と気付くことができました。
映画の父親とは歳や立場は違えど、その頃の自分と重ね合わせた部分もあり、それを含めて面白い映画だなと感じました。
人間の味覚は本当に不思議なもので、例えば同じものでも食べる環境や一緒に食べる相手によって味が変化します。
例えば一人で食べるカップラーメンはただお腹を満たすもの。でもこれが笑い合いながら友人たちと食べるとなぜか美味しく感じます。
さらに登山などで山登りの疲れを癒しながら絶景の中で食べるとどうでしょう?
『カップラーメンとはこんなにも美味しい物だったのかな?』と思うくらい美味しく感じることができます(ぜひ試してほしい!)。
オープニングからは想像もしなかった展開にびっくりしながらも心温まるストーリー。
八角の風味と生姜の効いたスープは疲れた身体と心を優しく包み満たしてくれるはずです。
(文・さわのめぐみ)