まずは、フランス映画の話から。
1990年代には『レオン』、2000年代は『アメリ』といった特大の人気作があったフランス映画界。
時代を遡れば、何世代にも渡って愛される『シェルブールの雨傘』(1964) や
『冒険者たち』(1967) など、星の数ほどの名作映画が。
さらに、“フランス映画はおしゃれ”
というイメージも根強くあり、ジャック・タチのコメディ『ぼくの伯父さん』(1958) や、
ゴダール×アンナ・カリーナ『女は女である』(1961)
といった、小粋なフランス映画だって存在するわけです。
フランスは映画大国でした。
しかし、人気は下降の一途。
スピード化する現代社会においてフランス映画は、
まったりしてる、わかりにくい、モヤモヤする、などの理由から敬遠され始め、日本での公開作も激減します。
でもここに来て、ストーリー性が高く感動できるフランス映画も増えてきました!
ターニングポイントは2011〜12年。
ハリウッドでリメイクもされた感動作『最強のふたり』が2011年に公開され、翌年には、
スポ根+シンデレラストーリーの『タイピスト!』と、
今回紹介する『大統領の料理人』とが立て続けに公開されたのです。
ひょんなことから、大統領のプライベートキッチンを
任されることになった女性シェフ・オルタンスを主人公にした『大統領の料理人』。
彼女は型破りな豪快さと絶品料理でお堅い官邸の常識と、
大統領の<心>を変えていくのですが、実話というから驚きます。
オルタンスの作る料理は、素材にこだわり、
その良さを最大限に活かす「おばあちゃんの味」。
自分の菜園から採れたトリュフや、リムーザン産牛肉など、
おいしい料理を作るために
産地指定で自ら食材調達まで行います。
スープはというと。
その一品は、大統領の一族が集う昼食会で提供され、
美食家のミッテラン大統領に魔法をかけた「シャラント風スープ」。
魚のうまみとハーブの香りが調和した郷土料理で、
大統領が幼少期に読み耽ったという
レシピ本を参考に作ったスープになります。
素朴な見た目だけどおいしそう!
他にも、トリュフたっぷりのタルティーヌや、
ナント産・エスカルゴのカスレット、フランスの伝統菓子サントノレなど、
地方色あふれるさまざまな料理が登場します。
食いしんぼうのみなさん、お楽しみに。
そして現代のフランス映画にもご注目ください。
ぼくが2020年の第1位に選んだ『燃ゆる女の肖像』なんて超オススメです。
(文・Kino Iglu 有坂 塁)