これぞ、グルメ映画のマスターピース!
1987年のデンマーク映画『バベットの晩餐会』。
今でこそ、『かもめ食堂』や『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』のように
食欲を刺激する"おいしい"映画は数多く公開されていますが、
『バベットの晩餐会』より以前は、皆無に近かったんです。
映画の中での"食事"という存在は、あくまで、食卓や居酒屋で誰かと会話をするための装置にすぎず、
シズル感のある"おいしい"映像なんて見かけることはなかった。
でも本作は、違いました。ラスト20分は食事が主役。
おいしい映像のオンパレード。字数が限られているので、ここではストーリーではなく、
贅の限りを尽くした食事シーンのみを紹介しておきます。
登場する食事は、フレンチのフルコース。これを12人でいただくのですが、
調理から始まり、一品一品おいしそうに味わうところまでを、20分間かけて丁寧に見せてくれます。
このフルコースの総額は、何と1万フラン!
(「12人分のお料理は1万フラン」というセリフが出てきます)
と言われても、あまりイメージがわかないと思いますが、いまのレートで計算すると、
お一人なんと92,000円です!
そんなコース、食べたことありません。食べたことありますか?
くいしんぼうの皆さんに、一応メニューを紹介しておくと…
シャンパンは「ヴーヴ・グリコ1860年物」、赤ワインは「クロ・ヴージョの1845年物」。ともにヴィンテージ。
「ブリニのデミドフ風」というパンケーキには山盛りキャビアがのってて、
「ウズラとフォアグラのパイ詰め石棺風」にいたってはソースが何と黒トリュフです。
そして、このコースのアペリティフとして出てくるのが「ウミガメのスープ」なのです。
そう、グルメを自称する人でも、ほとんど食べたことがないと言われる幻のスープ。
どれだけおいしいかは、スープを口に含んだ瞬間の表情を見ていただければ一発で理解できます。
どうでしょう?このメニューを聞くだけも観たくなってきてませんか?
ぜひご覧になるときは、さわのめぐみさんのスープを再現していただいて、
五感で映画を楽しんでみてくださいね。Bon appetit !!
(文・Kino Iglu 有坂 塁)